【着物お手入れ奮闘記:番外編】ちゃんと話を聞いておけばよかった
これは、ぼやきです。そして思い出話。
現在、受け継いだ祖母の着物のお手入れに奔走中の私ですが、とても悔いていることがあります。
それは、着物に関するエピソードを聞いておかなかったこと。
面倒くさがっていたのか、思い出したくなかったのか、今はもう分からないけど、祖母は着物に関心を持つ私にいい顔をしなかった。
だから、私は、桐箪笥の中に一体どういう着物があって、どの着物が価値のあるもので、どの着物が祖母にとって大事なものだったのか断片的にしか知らない。樟脳の香る桐箪笥は、祖母の聖域のように感じて勝手に開けるのも憚られた。
私の着物も一緒に仕舞ってもらっていて、たまに着物を着る機会があると、一緒に見てもらって必要なものを出した。小物類とか、着物の種類とか全然わかんないからあれは?これは?と聞いてばかりいた。
いい顔されなくても、答えてもらえなくてももっともっと聞いておけばよかった。着物の知識今よりもっとなかったから何にもわからなかったかもしれないけど、聞いておくんだった。
お手入れをしようとしてる今、切実に思う。
数少ない会話の記憶を元に必死に思い出しているけど、記憶は曖昧で不確かで、真実の輪郭はいつもぼやかされていく。
水色の色無地小紋は、「忘れた。安物だよ」と一蹴された気がするし
ピンクの訪問着は、「若い頃の。好きでよく着ていた」と言っていた記憶がある
立派な刺繍のある留袖を私がかっこいい!って言ったら「安物だよ」って言っていたような気もする。たしか。今でも私には高そうに見える。でもなけなしの記憶がそんな会話を呼び覚ます。
どの着物か忘れたけど、祖母は嫁入りに花嫁衣装を用意してもらえなくて(祖母の妹は用意してもらえたらしい)代わりに、留袖?と喪服を誂えてもらったと言っていた記憶がどこかにある。喪服は定かでないけど、確実に花嫁衣装の代わりになにか誂えてもらったと言っていた記憶はあって。今回、箪笥を整理していたら女紋のついた袖裏が赤絹の留袖が1着みつかって。これのことかもと思った。
私が記憶する祖母の留袖は、百合が描かれたもので、小学生だった私も出席した親戚の結婚式でのことだった。この留袖は、綺麗にお手入れされ畳紙に包まれて保管されてた。多分、お手入れに出してそのまま保管してたのだと思う。箔だけ落ちていて、それをシミかもと私は勘違いしてしまったのだけど。
仲人さんもよくやっていたみたいで、祖母は留袖を着る機会の多い人だった。
桐箪笥からでてきた私の着物たち
小さい頃は、家の近くの呉服屋で生地を持ってきてもらって浴衣を誂えてもらっていた。白地に蝶の描かれた浴衣は幼い私のお気に入りで祖母に着せてもらってよく着ていたことを思い出す。小学校高学年ごろに誂えた浴衣は、青地にハイビスカス、赤い作り帯も一緒に買ってもらった。自分で選んだ初めての浴衣だった。中学生くらいの時は、ユニクロの浴衣が流行って2着くらい買ってもらった。(帯とセットのとても安いものだった)高校生の時は、東京135°で市松模様に薔薇柄の浴衣を買った。大学生になって、いいものが着たくなり、祖母に相談したら、昔中国に行く時に誂えたという藍染の浴衣と赤い博多帯をもらった。この二つは、本当によく着て、美容院で着付けをお願いすると必ず「いいものね」と褒められた。私はそれが自慢だった。
七五三の着物は、全く記憶になくて、箪笥の中からかわいい柄の着物が出てきたのをみてこれ誰のだろうと思った。昔の写真を見て私のだとわかった。3歳の時のは、ピンクと赤で覚えていたのだけど、7歳のときの記憶は、足袋に台紙が入れられたままで足が痛いと言いながら歩いた記憶だけがある。着物のことは全然覚えていない。誰がどういう理由でこの着物を選んでくれたんだろう、もう聞けない。永遠に失われてしまったヒストリー
他にも誂えてから一度もおろしていないであろう男物の着物一式(息子に誂えたやつだと思うって言ってた気がする)や道行?や羽織とか、黒い付下げか訪問着とか。
私は価値もエピソードもしらないから、手探りで全く頼りにならない自分のカンでとりあえずお手入れをする。
「全部お前にやる。全部お前のになるんだから」
昔、言われたその言葉を強く強く覚えている。
祖母は、若い頃からお洒落な人で宝飾や服飾にお金をかけてきていた人だったと思う。晩年は、私が服を選んでいたけど、若い頃は洋服もオーダーメイドしていたみたいで。そんな人が私に残したものを、私が手入れしないで誰がするんだろう。そんな風に思って、今手入れをしている。伝手もないから、本当に手探りだけど。
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美しい留袖たちをね、着たいなあって思う。
ウェディングドレスよりも打掛よりも、私が憧れるのは祖母の遺した留袖。
よくよく考えると、ここまで着るのに制限のある服もなかなかないよなって思う。既婚の第一礼装。まず大前提が結婚していること。次に、格が高すぎて着ていく場所が限られるため、親類の結婚式や仲人の立場のみで着れること。選ばれし者だけが着れるものなんだよな〜
ちょっと調べてたら、こういう記事をみつけて、やっぱり同じようなこと考える人もいるよな〜と思った。
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